新しいWebサービスやアプリを作りたいと思っても、開発会社に何を伝えればよいのか迷うことがあります。必要な機能を書き出してみたものの、どこまで決めてから相談すればよいのか分からない、という方もいるでしょう。
初回の相談では、開発する目的と利用者、業務の流れ、最初に作る範囲、予算と期限、公開後の運用について共有すると、進め方を検討しやすくなります。未定の項目は、相談して決めたいこととして書き添えておきましょう。
この記事では、新しいサービスの開発を検討している事業担当者に向けて、相談前に整理したい5つのことを説明します。最後に、そのまま使える相談メモも用意しました。
1 開発する目的と利用者
まず整理したいのは、誰が、どの場面で、何に困っているのかです。
「予約機能がほしい」という要望でも、予約を申し込む人と、予約を管理する人では必要なものが異なります。利用者と困っている場面を具体的にすると、開発会社も実現方法を提案しやすくなります。
例えば、架空のサービスとして、小規模な教室向けの体験レッスン受付サービスを考えてみます。相談時には、次のように伝えられます。
教室の運営者が、電話やメールに分かれて届く体験レッスンの申し込みをまとめて確認できるようにしたい。申し込みの見落としと、日程調整の負担を減らしたい。
ここまで分かると、申し込みを受ける画面に加えて、教室側が対応状況を確認する仕組みも検討できます。導入後に「見落としを減らせたか」「日程調整の負担が変わったか」を振り返るための軸にもなります。
新規事業では、利用者の困りごとがまだ仮説の段階にあることもあります。その場合は、顧客への聞き取りで確認できたことと、これから確かめたいことを分けて共有しましょう。開発と並行して検証すべき内容が見えてきます。
2 現在の流れと実現したい流れ
次に、利用者が何かを始めてから、目的を達成するまでの流れを整理します。
先ほどのサービスなら、「申し込みフォームを送信する」だけでなく、教室側が内容を確認し、日程を調整し、参加者に確定の連絡をするところまでが一連の流れです。
以下の例では、新しい申し込みをWebフォームで受け付ける運用を想定します。電話やメールでの受け付けも続ける場合は、その申し込みを担当者がシステムに登録できる機能なども、最初に作る範囲として検討します。
| 場面 | 実現したい状態 |
|---|---|
| 参加者が申し込む | 希望するレッスンと候補日を送信できる |
| 受け付けを知らせる | 申し込みを受信したことを参加者にメールで知らせる |
| 教室側が確認する | 申し込み内容と対応状況を一覧で確認できる |
| 日程を調整する | 担当者が空き状況を確認し、参加者に連絡する |
| 対応を記録する | 日程確定やキャンセルの状況を残せる |
この流れなら、日程調整は担当者が行い、システムは受け付けと状況管理を担います。空き枠を自動で確保する仕組みまで必要かどうかは、別に判断できます。
現在使っている申込用紙、メールの文面、管理表などがあれば、相談の際に見せると具体的に話を進められます。新しい事業で既存の資料がない場合は、想定する流れを箇条書きにするところから始めましょう。
通常の流れに加えて、候補日がすべて埋まっていた場合や、申し込み後にキャンセルされた場合の対応も挙げておくと、必要な機能や運用を確認できます。
3 最初の公開で作る範囲
目的と流れが見えたら、最初の公開に必要な範囲を考えます。将来追加したい機能も書き出し、それぞれをいつ必要とするか整理しましょう。
体験レッスン受付サービスでは、初期の構成を次のように分けられます。
| 分類 | この例での候補 |
|---|---|
| 最初にシステムで対応する | 申し込みフォーム、受付メール、教室側の申し込み一覧、対応状況の記録 |
| 当面は担当者が対応する | 空き状況の確認、日程の調整、参加者への確定連絡 |
| 利用状況を見て追加を検討する | オンライン決済、空き枠の自動確保、外部の予約サービスとの連携 |
この分け方は、初期の申込件数が少なく、担当者が日程調整に対応できる場合の一例です。予約の即時確定が利用者にとって重要なら、自動で空き枠を確保する機能を初回から含める判断もあります。
手作業で補う場合は、誰が、どの程度の件数まで対応できるかも確認します。担当者の負担が大きくなるなら、開発範囲とあわせて運用方法を見直す必要があります。
また、利用者にサービスを提供するために必要な品質も、開発範囲に含めて考えます。例えば、このサービスでは申し込み情報を教室ごとに適切に管理できることや、受付メールの送信に失敗したときに状況を確認できることが必要です。
初回の範囲は、「この構成で利用者が目的を達成できるか」「運営側が提供を続けられるか」を確かめながら決めましょう。
4 予算と公開時期の条件
予算と公開時期については、希望と、変更しにくい条件を分けて伝えます。
例えば、体験レッスンの募集開始日に合わせて公開したいのであれば、その日付と理由を共有します。社内での動作確認や、教室の担当者が操作を覚える時間も必要になるため、実際に使い始める日から逆算して相談するとよいでしょう。
予算では、初期開発に使える金額の目安に加えて、公開後の費用も確認します。サーバーや外部サービスの利用料など継続的に発生する費用と、機能追加や個別の改修など必要に応じて発生する費用を分けて整理します。保守や問い合わせ対応については、契約に含まれる作業と、別途費用がかかる条件を確認しましょう。
まだ予算が決まっていない場合は、金額を判断するために何を知りたいのかを伝えられます。
社内で予算を検討するために、最初の構成で実現できることと、開発費・運用費の概算を知りたい。
初期段階の概算には、未確定の条件が含まれます。見積もりを受け取るときは、対象の機能、前提としている運用、費用に含まれる作業を確認しましょう。予算や期限が合わない場合も、その条件をもとに、段階的な公開や機能の優先順位を検討できます。
5 公開後の運用と改善の進め方
公開後に誰がサービスを運営するかも、相談の段階で考えておきたいことです。日常の運用を担当する人や、改善の優先順位を決める人が分かると、管理機能や引き継ぎに必要な内容を検討できます。
体験レッスン受付サービスなら、次のような役割を確認します。
- 申し込みを確認し、参加者に連絡する人
- レッスンの内容や受付条件を変更する人
- 利用者からの問い合わせを受ける人
- 不具合が起きたときに開発会社と連絡を取る人
- 利用状況を確認し、次の改善を決める人
あわせて、公開後に何を確認するかも決めておきます。この例なら、申込件数だけでなく、申し込みから日程確定までにかかった時間や、対応状況が分からなくなった件数などが候補になります。
目的が日程調整の負担を減らすことなら、担当者の作業時間や使いにくかった場面も確認すると、次に改善する内容を考えられます。記録したい情報を事前に共有しておくことで、必要な計測や管理機能も開発時に相談できます。
相談に使えるメモ
ここまでの5項目は、次の表にまとめて共有できます。各欄には、分かっていることと、相談して決めたいことを書きましょう。
| 項目 | 書いておきたいこと |
|---|---|
| 目的と利用者 | 誰の、どの場面の困りごとを解決したいか。実現できたと判断する状態は何か |
| 現在と今後の流れ | 現在の対応方法、利用開始から完了までの流れ、キャンセルなどの例外対応 |
| 最初に作る範囲 | 初回から必要なこと、当面は人が対応できること、将来追加したいこと |
| 予算と期限 | 予算の目安、希望する公開時期、動かせない条件、概算を知りたい範囲 |
| 公開後の運用 | 日常の担当者、判断する人、保守や改善を依頼したい範囲、確認したい利用状況 |
このメモをもとに話すと、具体的な機能を決めるために何を確認する必要があるか、整理できます。参考サービスのURLや手描きの画面案がある場合も、どの部分を参考にしたいのかを添えると、意図を共有しやすくなります。
企画段階から開発を相談する
wachaでは、新しいWebサービスやアプリの企画・要件整理から、設計・開発、公開後の保守・改善まで支援しています。自社でもワンアスクやリサーチプレスを企画・開発・運営しています。
対応範囲はWeb/アプリ開発、相談から公開後までの流れは開発の進め方でご案内しています。
何から作るか、どこまで作るかを整理したい方は、分かっていることや未定の項目を添えて、企画段階の開発についてご相談ください。
要件定義を詳しく知りたい方へ
IPAのユーザのための要件定義ガイド 第2版では、事業や業務の要求を把握すること、利用する側が主体的に関与することを扱っています。社内で要件定義の進め方を検討する際の参考になります。
